ACCAの学習内容と国際ビジネスでの実務活用
ACCA全13科目で何を学ぶのか?具体的な学習内容と国際ビジネスでの実務活用を完全解説
ACCA(Association of Chartered Certified Accountants)は、単なる「会計資格」ではありません。IFRSを軸に、会計・ファイナンス・法務・経営・戦略を英語で、かつ実務レベルで使える形にまで引き上げる、世界標準のプロフェッショナル資格です。 日本でも公認会計士試験に英語式が導入されて、公認会計士に英語力が必要だという事が明確になってきました。 ですが本当に世界と戦える力を付けていくのであれば圧倒的にACCAに軍配が上がります。
本記事では、ACCAの全13科目について、具体的にどのような内容を学ぶのか、そしてそれが国際ビジネスのどの場面で役に立つのかを、一部の具体例を交えながら解説します。(実際の試験範囲はこれよりも広範です)

Applied Knowledge|ビジネスと会計の土台を作る3科目
Business and Technology(BT)
BTでは、以下のようなテーマを学習します。
- 企業組織の構造(取締役会・委員会・経営陣)
- コーポレートガバナンスとステークホルダー
- リーダシップとマネジメント理論
- 内部統制・内部監査・リスクマネジメント
- ITシステムとビジネスプロセス
- 経済学
▶ 実務活用:海外子会社管理、内部統制構築、ガバナンス説明などで「なぜこの仕組みが必要なのか」を論理的に説明できます。
Financial Accounting(FA)
FAでは、IFRSに基づく財務会計の基礎を学びます。
- 会計・簿記の基礎
- 棚卸資産・固定資産・減価償却
- 引当金・偶発負債
- PL・BS・CFの作成
- 連結決算
▶ 実務活用:英語での会計の運用能力の基礎が身に付く。IFRS財務諸表を理解し、海外企業や外資系企業の数字を説明できるようになります。
Management Accounting(MA)
MAでは、社内意思決定のための管理会計を扱います。
- 固定費・変動費分析
- CVP分析(損益分岐点)
- 標準原価計算・差異分析
- 短期意思決定(Make or Buyなど)
- 統計学
▶ 実務活用:製造業関連の原価計算の基礎知識、価格設定、新規事業、撤退判断などを説明できます。
Applied Skills|実務の中核となる6科目
Corporate and Business Law(LW)
LWでは、国際ビジネスに不可欠な法務知識を学びます。
- 契約の成立要件
- 売主・買主の責任(Breach of Contract)
- 取締役の義務・責任
- 不法行為・過失責任
▶ 実務活用:海外拠点運営時の基礎知識が身に付く。契約交渉やトラブル発生時の判断基準となります。
Financial Reporting(FR)
FRはIFRSの中核科目です。
- IFRS15(収益認識)
- IFRS16(リース)
- 金融商品(測定・減損)
- 連結財務諸表
▶ 実務活用:IFRSの体系的かつ包括的な理解。IFRSベースでの決算の作成、決算説明、監査人や投資家対応、海外本社との議論が可能になります。
Performance Management(PM)
PMでは、業績評価と管理会計の応用を学びます。
- KPI設計・バランススコアカード
- ROI・Residual Incomeによる評価
- 予算統制と行動への影響
▶ 実務活用:海外拠点・事業部のパフォーマンスを公平に評価し、改善提案が可能になります。経営企画的な業務に役に立ちます。
Financial Management(FM)
FMでは、企業価値と投資判断を理論的に学びます。
- DCFによる企業価値評価
- WACCの算定
- NPV・IRRによる投資判断
- 資本構成・配当政策
- 運転資本管理
▶ 実務活用:海外M&A、投資案件、資金調達の判断を理論ベースで行えます。
Taxation(TX)
TXでは、税金の構造と意思決定への影響を学びます。ここではUKの税金を前提にしています。
- 法人税・所得税の基本構造
- VAT
- キャピタルゲイン課税
- 税務計画(Tax Planning)
- 税務リスクとコンプライアンス
▶ 実務活用:投資判断、法人設立、報酬設計において税務を考慮した判断ができます。
Audit and Assurance(AA)
AAでは、監査の考え方とリスク視点を学びます。
- 監査リスクモデル
- 内部統制評価
- 監査証拠の収集
- 監査意見の形成
▶ 実務活用:国際監査基準の学習。数字の信頼性を評価し、企業のあるべき内部統制や、不正や誤謬のリスクを見抜けるようになります。

Strategic Professional|経営レベルで通用する力を完成させる4科目
Strategic Professionalは、ACCAの最終レベルです。ここでは新しい知識を大量に覚えるというより、これまで学んだ会計・ファイナンス・経営・法務を統合し、「プロとして使えるか」が問われます。
試験はすべて記述式で、CFO・CEO・取締役会といった経営層向けのレポートや提案を書く形式になります。
Strategic Business Reporting(SBR)
SBRは、IFRSの最終到達点とも言える科目です。単に会計基準を適用するのではなく、その基準が企業の意思決定やステークホルダーにどのような影響を与えるかを説明する力が求められます。
主な学習内容:
- IFRSの概念フレームワークと原則主義
- IFRS 15(収益認識)の判断と見積り
- IFRS 9(金融商品)の測定・減損
- IFRS 16(リース)の経営への影響
- 連結・企業結合・非支配持分
- サステナビリティ報告・統合報告
▶ 実務活用:IFRS財務諸表を「作れる・読める」だけでなく、「説明し、批判的に評価できる」ようになります。海外CFO・投資家・監査人との議論に参加できるレベルです。
Strategic Business Leader(SBL)
SBLは、ACCAの中でも最も「経営者視点」が求められる科目です。会計・ファイナンス・リスク・人材・ITを横断的に使い、企業の意思決定を導くことが目的です。
主な学習内容:
- 企業戦略(PESTEL、5 Forces、SWOT)
- リスクマネジメントと内部統制
- ガバナンスと倫理
- デジタル戦略・IT投資
- リーダーシップと組織変革
▶ 実務活用:CFO・CEO向けに「何をすべきか」「なぜそう判断するのか」を英語で説明できる力が身につきます。コンサル・経営企画・経営管理職で特に強力です。 この2科目が終わると最後に選択科目4科目(AFM、APM、AAA、ATX)の中から2科目を受験します。(2027年以降は1科目) ここが会計士としての最高の専門分野を決める一科目になります。 ここでは日本人でも学習しやすいAFMとAPMを説明します。
Advanced Financial Management(AFM)
AFMは、FMの上位科目であり、国際ファイナンスと企業価値最大化をテーマにしています。M&Aや投資判断の現場で使われる内容が中心です。
主な学習内容:
- DCFによる企業価値評価(高度な前提設定)
- M&Aにおける買収価格の妥当性分析
- 国際資本コスト(WACC)
- 為替リスク・ヘッジ戦略
- 多国籍企業の資金調達戦略
▶ 実務活用:M&A、投資案件、ファイナンス戦略において、理論と実務をつなげた判断ができるようになります。FP&A、CFO候補、投資関連職種に直結します。
Advanced Performance Management(APM)
APMは、PMの上位科目であり、戦略と業績評価をどう結びつけるかを深く考える科目です。数字だけでなく、人と行動をどう変えるかがテーマです。
主な学習内容:
- 戦略KPIとバランススコアカード
- 価値ベース経営(EVAなど)
- 非財務指標(ESG・サステナビリティ)
- 業績評価制度と行動への影響
- 組織文化とコントロール
▶ 実務活用:経営戦略を「評価制度」に落とし込み、人と組織を動かす仕組みを設計できます。経営企画・管理会計・コンサル分野で特に有効です。
SBR・SBL・AFM・APMは、それぞれ分野は違いますが、共通しているのは「プロとして説明し、意思決定を導く力」を求めている点です。
ACCAの最終レベルまで学び切ると、英語・IFRS・ファイナンス・戦略を使い、世界を相手にビジネスで戦える会計プロフェッショナルとしての土台が完成します。
ここまで来た際の英語力はもう国内では敵なしのレベルに高めることができます。
最終レベルでは、これまでの知識を統合し、CFO・CEO向けのレポートや提案を行います。IFRSの批判的分析、戦略判断、リスク対応など、経営そのものが問われます。 経営的なレベルを目指し、やりがいや高報酬を目指すキャリア志向の方は是非このレベルまで目指すべきです。
まとめ|ACCAは国際ビジネスの「実務辞書」
ACCAの各科目で学ぶ内容は、試験のための知識ではなく、国際ビジネスの現場で実際に使われているものです。だからこそACCAは世界中で評価され、実務家に選ばれ続けています。 ヨーロッパはもちろん、中国・インド・東南アジアなどで急速に受験者が増えており、このグローバル会計市場で生き残っていけるかどうかという国際競争はもう起こっています。
そんな中で、IFRS、ファイナンス、法務、経営、英語表現力を本気で身につけて世界と戦って成長・成功したい方にとって、ACCAは極めて合理的な資格だと言えるでしょう。 日本人も是非学習をして、世界と戦える存在が増えてほしいと思っています。


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