【科目別解説】ACCAのFinancial Accountingについて
ACCA Financial Accounting(FA)試験とは?
学べるIFRS・IASと試験概要を徹底解説
ACCA(Association of Chartered Certified Accountants)の Financial Accounting(FA)は、
ACCA資格のApplied Knowledge(基礎)レベルに位置づけられる科目です。
ACCAの中でも最初期に受験されることが多く、
「IFRSを英語で学ぶ最初の本格的な入り口」と言える重要な試験です。
本記事では、FA試験の概要に加えて、
「具体的にどのIFRS・IASを学べるのか」を明確にし、
なぜFAがその後のACCA学習や国際会計キャリアの土台になるのかを詳しく解説します。
ACCA Financial Accounting(FA)の位置づけ
Financial Accounting(FA)は、会計の基礎概念から財務諸表の作成までを扱う科目で、
以下の力を身につけることを目的としています。
- 複式簿記による取引記録
- 財務諸表(損益計算書・財政状態計算書など)の作成
- IFRS(国際財務報告基準)の基本的な考え方の理解
- 英語で会計を理解する基礎力
日本の簿記試験と似た内容もありますが、FAでは
最初からIFRSを前提に学ぶ点が大きな違いです。
FA試験で学べる主なIFRS・IAS一覧
ACCA FAでは、すべてのIFRSを網羅的に学ぶわけではありませんが、
実務で最も重要な基礎的基準が厳選されて扱われます。
以下は、FAで重点的に学習する代表的なIFRS・IASです。

FAで学ぶIFRSの“地図”
1)IFRS 概念フレームワーク(Conceptual Framework)
FAの最重要前提。個別基準の前に、「そもそもIFRSは何のために、誰のためにあるのか」を学びます。
- 財務報告の目的(投資家・債権者などへの有用情報)
- 要素の定義:資産・負債・資本・収益・費用
- 認識(recognition):計上する条件
- 測定(measurement):取得原価、現在価値、公正価値など“考え方”
- 質的特性:relevance / faithful representation など
ポイントは、「暗記」より「言葉の意味」。ここが曖昧だと後続基準が全部ぼやけます。
2)IAS 1:財務諸表の表示(Presentation of Financial Statements)
財務諸表の“型”を定める基準。FAでは、実際にP/LやSFPを作る問題にも直結します。
- 財務諸表の構成と目的
- 表示の一貫性・重要性(materiality)
- 発生主義・継続企業(going concern)
- 主要ステートメントの読み書き(名称にも慣れる)
3)IAS 2:棚卸資産(Inventories)
在庫はFAで頻出。仕訳・原価計算の感覚とIFRSの評価ルールが混ざります。
- 測定:cost と NRV(正味実現可能価額)の低い方
- 原価の構成(購入・加工・その他直接費などの考え方)
- 原価計算:FIFO / weighted average
- 評価損(write-down)と戻入の発想(概念理解)
4)IAS 16:有形固定資産(Property, Plant and Equipment)
固定資産の取得・減価償却・売却/除却まで。FAの計算問題の柱です。
- 取得原価に含めるもの(設置費、運搬費など)
- 減価償却(depreciation):耐用年数・残存価額・方法
- 売却/除却時の損益(profit/loss on disposal)
- 日付・期間按分など、数字の取り扱い
5)IAS 38:無形資産(Intangible Assets)
IFRSらしさが強い基準。とくに研究費・開発費(R&D)の考え方が重要です。
- 無形資産の定義(identifiable / control / future economic benefits)
- 研究(research)は費用、開発(development)は条件付きで資産
- 償却(amortisation)と耐用年数の考え方
6)IAS 36:資産の減損(Impairment of Assets)
FAでは“計算の深掘り”より、減損の基本ロジックをつかむ位置づけです。
- 減損の兆候(impairment indicators)の発想
- 回収可能価額(recoverable amount)の概念
- 減損損失(impairment loss)の認識
7)IAS 37:引当金・偶発負債(Provisions, Contingent Liabilities and Contingent Assets)
“見積り”がテーマ。FAでも判断問題で問われやすい領域です。
- 引当金(provision)の認識要件:現在義務・資源流出の可能性・合理的見積り
- 偶発負債(contingent liability)との違い
- 将来の不確実性をどう扱うか(会計の哲学)
8)IAS 10:後発事象(Events After the Reporting Period)
決算日後の出来事をどう扱うか。FAでは分類(調整/非調整)が主戦場です。
- adjusting events:決算日現在の状況を裏付ける → 数値を修正
- non-adjusting events:決算日後に発生 → 原則は開示
- 開示の考え方(何が重要か)
9)IAS 8:会計方針・見積り・誤謬(Accounting Policies, Changes in Accounting Estimates and Errors)
「過去の数字をどう直すか」を扱います。FAでは概念理解が中心。
- 会計方針(policy)変更:原則は遡及適用(retrospective)
- 見積り(estimate)変更:原則は将来に向けて反映(prospective)
- 誤謬(error):訂正の考え方
FAで入門的に触れる基準(Financia Reporting以降で本格化)
次の基準は、FAで「存在・基本発想」レベルで触れやすい一方、点数の中心はFR以降になりがちです。
ただ、FAで先に“用語と思想”を押さえておくと後が楽になります。
10)IAS 7:キャッシュ・フロー計算書(Statement of Cash Flows)
- Operating / Investing / Financing の区分
- 間接法(indirect method)の基本ロジック
- 利益とキャッシュが違う理由
11)IFRS 15:顧客との契約から生じる収益(Revenue from Contracts with Customers)
- 収益認識は「契約」ベースという発想
- 何を満たしたら収益を認識するか(概念理解)
12)IFRS 16:リース(Leases)
- リースをどう捉えるか(借手のオンバランスの発想)
- 会計処理の方向性(詳細計算は上位で)
FA試験の形式と合格基準
FA試験はコンピュータベース試験(CBE)で実施され、
主に以下の形式で構成されます。
- 客観式問題(選択式・計算問題)
- 複数ステップを要する実務型問題
合格基準は50%以上です。
ACCAの中では比較的合格率が高く、
基礎を丁寧に学習すれば十分に合格可能な科目です。
なぜFAは「IFRSを本当に理解する第一歩」なのか
日本の資格試験では、IFRSはどうしても
「比較対象」や「補足知識」として扱われがちです。
一方、ACCA FAでは、
最初からIFRSを前提に会計を組み立てる
ため、理解の深さが大きく異なります。
また、英語で学習・受験することで、
- 会計用語を英語で理解できる
- IFRSの原文ベースの考え方に慣れる
- 将来の国際業務への耐性がつく
という副次的な効果も得られます。
まとめ|Financial Accounting(FA)は国際会計キャリアの基礎固め
ACCA Financial Accounting(FA)は、
単なる「最初の科目」ではなく、
IFRSを英語で理解し、使い始めるための重要な基礎科目です。
IAS 1、IAS 2、IAS 16、IAS 38 など、
実務で頻出する基準を体系的に学べるため、
その後のACCA上位科目だけでなく、
国際会計・外資系企業・海外業務にも直結します。
これからIFRSや英語での会計力を本格的に身につけたい方にとって、
FAは間違いなく最初に攻略すべき重要科目と言えるでしょう。
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