国際会計士試験・ACCAについて【概略】
ACCAとは?国際舞台で活躍するための会計資格を徹底解説
グローバル化が進む現代のビジネス環境において、会計・財務分野でも「世界で通用する資格」の重要性は年々高まっています。
日本においても常に成長を遂げている企業は総合商社やメーカーなど、グローバル展開をしている会社です。
そしてそれらの会社は国際財務報告基準、IFRSを採用して、グローバルな会計に対応しています。
そこでは海外子会社との連結決算、IFRS対応、外資系企業との協業など、日本国内にいながらも国際的な会計知識を求められる場面は増え続けています。
また、外資系企業の日本への進出に伴い、英語でIFRSを操れる人材のニーズも増えてきており、外資系企業では日系企業よりも高額な報酬を提供しています。
そのような背景の中で注目されているのが、国際会計資格である
ACCA(Association of Chartered Certified Accountants)です。
本記事では、ACCAの概要から試験制度、取得メリット、日本人にとっての価値までを詳しく解説します。
ACCAの概要|100年以上の歴史を持つ国際会計士団体
ACCAは1904年にイギリスで設立された国際的な会計専門職団体です。
1974年には英国王室から勅許(Royal Charter)を授与され、現在では
世界180か国以上で認知されている国際会計資格として確固たる地位を築いています。
現在、ACCAは20万人以上の会員と、約48万人の学生を擁しており、
世界最大級の会計士団体の一つとされています。
特定の国に依存しない「グローバルスタンダードな会計プロフェッショナル」を育成する点が、
ACCAの大きな特徴です。
ACCAの仲間たちは世界中にいますし、ACCAを目指しているライバルたちも世界中にいます。

ACCAが世界から高い評価を受ける理由
IFRSを中心とした実務重視のカリキュラム
ACCAのカリキュラムは、国際財務報告基準(IFRS)を中心に構成されています。
そこでは日本の簿記検定のように計算を重視しているわけでもなく、USCPAのように単なる重箱の隅のような理論の暗記でもなく、「会計情報をどのように経営判断へ活かすか」という実務的な視点が重視されています。
学習範囲は、IFRS財務会計、管理会計、監査、税務、コーポレートファイナンス、経営戦略、リスクマネジメント、
ガバナンス、倫理など多岐にわたります。
これにより、会計と経営の両面を理解した人材を育成する仕組みとなっています。
学歴・国籍を問わない柔軟な制度
ACCAは設立当初から「機会の平等」を重視しており、学歴や国籍に大きく左右されない受験制度を採用しています。
大学卒業者だけでなく、社会人や実務経験者など、多様なバックグラウンドの人が挑戦できる点も世界的に評価されています。
まだ大学在学中の方や高校卒業の方も、Foundation levelというところから受験を開始することができるため、改めて大学に行ったり単位を取ったりというようなことをする必要がないのが大きな魅力です。
また一方で日本の大学の商学部を卒業したような方は、試験の数科目が免除になる可能性があります。
その方にとって適切なスタートラインから始められることになるので非常に柔軟になっています。
国際的に高い認知度と信頼性
ACCAは、外資系企業、多国籍企業、国際会計事務所、金融機関などで高く評価されています。
国や地域によっては、法定監査や署名権につながるルートが用意されている場合もあり、実務資格としての信頼性は非常に高いと言えます。
ACCAが特に有力とされる国・地域
ACCAは180か国以上で認知されていますが、その中でも特に評価が高く、
キャリア形成に直結しやすい国・地域が存在します。

イギリス・ヨーロッパ
ACCA発祥の地であるイギリスでは、ACCAは非常に高い評価を受けており、
監査法人、会計事務所、一般企業の財務部門など、幅広い分野で活躍が可能です。
EU諸国においてもIFRSが共通基準であるため、ACCAの知識はそのまま実務に活かすことができます。
アジア(シンガポール、香港、マレーシアなど)
アジア地域では、特にシンガポール、香港、マレーシアなどでACCAの評価が高く、
外資系企業や国際会計事務所での採用において有力な資格とされています。
これらの国ではACCA取得者が管理職やCFOポジションに就くケースも珍しくありません。
中東・アフリカ
中東やアフリカ諸国でもACCAは広く普及しており、インフラ開発、エネルギー、
国際金融分野などで高い需要があります。
特に英語を業務言語とする国では、ACCAは実務資格として強い影響力を持っています。
日本における位置づけ
日本ではUSCPAや日本の公認会計士ほどの知名度はありませんが、
その分、「国際会計・IFRSに強い専門人材」として明確な差別化が可能です。
外資系企業、海外子会社管理、国際財務部門では評価される場面が増えています。
ACCA試験制度の全体像
ACCA資格を取得するためには、全13科目の試験に合格する必要があります。
試験はレベル別に構成されており、基礎から応用、そして戦略レベルへと
段階的に学習を進められる仕組みになっています。

Applied Knowledge(基礎知識レベル)
- Business and Technology
- Management Accounting
- Financial Accounting
このレベルでは選択問題が中心です。記述式はありません。
合格率も70%程度のものが多く、比較的容易に合格するレベルになります。
Applied Skills(応用スキルレベル)
- Corporate and Business Law
- Performance Management
- Taxation
- Financial Reporting
- Audit and Assurance
- Financial Management
このレベルは7割程度が選択式問題、3割程度が論述式になってきます。
このあたりから英語で自分の意見を表現できるようになっていきます。
財務会計やファイナンスなど幅広く基礎知識を固めることができるのがこのレベルの学習です。
Strategic Professional(戦略レベル)
- Strategic Business Leader(必須)
- Strategic Business Reporting(必須)
- 選択科目(2科目)
戦略レベルではケーススタディ形式の問題も多く、知識だけでなく実務的な判断力や分析力が問われます。
選択式は無くなり全て記述式となります。
実際の複雑なビジネスの課題を自ら解決し、提案できるCFO的な能力を育ててくれます。
実務経験と倫理要件
ACCA会員になるためには、試験合格に加えて
実務経験(PER:Practical Experience Requirement)と
倫理・プロフェッショナリズムモジュールの修了が必要です。
これにより、知識だけでなく、高い職業倫理と実務能力を備えた
会計プロフェッショナルとしての水準が担保されています。
実務経験は3年間が求められます。財務会計など同じことを3年やるよりも、管理会計や税務など幅広く経験をする方が条件を満たしやすいです。
税務や投資評価など幅広く実務経験は認めてくれますが、やはり会計に関連した仕事が中心となりますので、資格を取得するためには会計関連のお仕事をすることをおすすめします。
とはいえUSCPAなどと同様、合格だけでも評価はされますので、まずは合格を目指しましょう。
実務要件は合格後に転職などをして満たすことも可能です。
倫理モジュールはE-learningのような学習を実施する事で取得が可能になります。
日本人にとってのACCAの価値
国際キャリアへの強力なパスポート
日本の会計資格は国内では強い一方、海外での認知度に限界がある場合もあります。
ACCAは国際共通の資格として機能するため、
海外勤務や外資系企業への転職を目指す人にとって大きな強みとなります。
IFRS人材としての差別化
IFRSに精通した人材は、日本企業においても依然として不足しています。
ACCAを通じて国際会計基準を体系的に学ぶことで、
希少性の高い専門人材として差別化することが可能です。
会計×経営視点を持つプロフェッショナルへ
ACCAは単なる会計資格ではなく、経営戦略やリーダーシップも重視しています。
そのため、経理・財務担当者にとどまらず、
経営に近い立場で活躍したい人にも適した資格です。
ACCA試験の合格科目の失効期限
ACCA試験の大きな特徴の一つが、「一度合格した科目が原則として失効しない」という点です。
日本の会計資格試験では、一定期間内に全科目合格しなければならないケースも多いです。
一方のUSCPAでは、合格した科目は一定期間が過ぎると失効してしまい、やりなおしになり、これによりかなりの数の受験生が諦めているのが実態です。
ACCAではその考え方が大きく異なります。
初級のApplied Knowledge および 中級のApplied Skills レベルの科目については、合格の有効期限は設けられていません。
つまり、一度合格すれば、その科目は生涯有効となります。
実際にかなり昔に合格したものをずっと自分の履歴書に書いてアピールしている人も海外にはたくさんいます。
そのため、ACCAは仕事や家庭の事情に合わせて、数年かけて少しずつ取得していくことも可能です。
当社の生徒様も、年度末決算の繁忙期は試験を避けたり、結婚や出産のタイミングでは試験を避けたりしておられます。
あるいは会計の分野に転職活動をしたり、駐在などの異動の前後で忙しくなったりなどの場合にも、ACCAは一旦置いておいて、人生のステップアップに集中される方もいます。
それで全然問題ありません。
資格よりも重要なことは人生にいくらもありますし、資格は人生を豊かにする「手段」であって、人生の「目的」ではないはずだからです。
しかし一方で、上級のStrategic Professional レベルについては注意が必要です。
最初の戦略レベル科目に合格してから7年以内に、すべての戦略レベル科目を合格する必要があります。
この期限を超えた場合、再度一部科目の再受験が求められる可能性があります。
この仕組みは、戦略レベルに求められる「最新の実務知識・判断力」を担保するためのものであり、
基礎・応用レベルについては長期的な学習を前提とした柔軟な制度設計となっています。
とはいえ、7年という十分すぎるほどの時間が与えられています。
正直、7年間ずっと挑戦し続けて受からないというのはあまり考えられないです。
マラソンのようにコツコツとマイペースでやっていけば、いずれはゴールできる。
そしてその中で会計士の能力も英語力も大きく成長していける。
ACCAはそんな資格としてデザインされています。
ACCA資格取得後のキャリアパス
ACCA資格は、単なる「会計資格」にとどまらず、キャリアの選択肢を大きく広げてくれます。
以下は、代表的なキャリアパスの一例です。

外資系企業の財務・経理
ACCA取得者は、外資系企業では言うまでもなく評価されます。
海外のグローバル企業の多くはIFRSを採用しています。
採用する側としてはIFRSに少しでも精通していることや、それを英語で理解・報告できるような人材を求めています。
本社と英語で連絡・会議ができたりするような人材、海外子会社の会計を全て任せられるような人材には常に高い評価がされ、日系企業の倍程度の報酬が与えられることも珍しくありません。
無駄な社内政治も少なく、接待などの付き合いも少ない、その一方で年収1千万超えは当然の世界がそこには確実に存在しており、これらの会社に対してACCAでIFRSの知識と英語力のコミュニケーション能力を大いにアピールできます。
多国籍グローバル企業の財務・経理
ACCA取得者は、グローバル企業の財務・経理部門でも高く評価されます。
グローバル企業の多くは、世界中から投資家を集めるために、世界共通の会計基準を採用することがもはやマストになっています。
その世界共通の会計基準こそが、国際財務報告基準、IFRSというものです。
かつては米国会計基準というアメリカの会計基準で多くの日本のグローバル企業は財務諸表を作成して経営成績を公表していたのですが、世界のIFRSへの変化を受けて、これらのグローバル企業のほとんどはアメリカの会計基準からIFRSへ変更をしてしまいました。
日本人の多くがUSCPAでアメリカの会計基準を学習しているのはタダの名残であって、特に勉強しても直接的に関係する知識ではないわけです。
グローバル企業でも海外の子会社の管理や海外の会社の買収(M&A)などの際に、IFRSが英語で扱えるような人材が圧倒的に不足しています。
そのため、IFRSや国際的な会計実務に精通している人材というのは、報酬も大きなグローバル企業への道も見えてきます。
国際会計事務所・監査法人
Big4をはじめとする国際会計事務所では、ACCAは実務能力を示す資格として認知されています。(特に海外)
イギリスなど一部の国では、ACCAを何科目か合格していることやあるいは全科目合格していることが採用の時の前提条件になってきます。
その方の年齢や経験によりますが、会計事務所に入れば、監査、税務、アドバイザリー、IFRSコンサルティングなど、専門性の高い分野へのキャリア展開も可能です。
そして一度有名なBig4の職歴が付くと、後は他のどの事業会社からも欲しがられるような一流人材としての箔がついてきます。
会計事務所の中には会計士資格を持っている先輩方も多いので受験の相談ができたり、合格後の資格認定の際にも助けてくれるのも魅力です。
経営企画・FP&A・CFO候補
ACCAでは会計だけでなく、経営戦略、リスク管理、リーダーシップも学習対象となります。
会計だけができるという人材は結局のところキャリアで行き詰まることになります。
リーダシップをもって、会社の財務状態を適切に把握し、投資機会を評価し、リスクを分析・管理し、経営に参画できる会計人材というのは思いのほか少ないです。
そのため、これらの能力を活かせる経営企画、FP&A(財務分析)、さらには将来的なCFO候補として、ACCAの知識や試験で培われる表現力・説得力が評価されることになります。
財務や会計の知識なくして、現代の企業経営は不可能です。
その必要不可欠な分野のトップとして仕事をして、会社に変革を与える。
非常に夢のある憧れのキャリアですよね。
そしてこの分野も当然ながら会社の中枢の仕事になるため、報酬も高くなっていくのも魅力です。
海外就職・国際キャリア
ACCAは世界共通の資格であるため、海外就職を目指す際の「信頼できるスキル証明」となります。
実際に世界にはこのACCAの資格を取って、貧しい自国を出て、アラブ圏やヨーロッパ圏に仕事を見つけてそこで働く人というのが確実に存在しています。
英語とIFRSの知識と経験があれば、実際に他国にいっても問題なく仕事でパフォーマンスは出せます。
特に英語環境での会計・財務職を目指す人にとっては、大きなアドバンテージとなります。
人口減少により経済力が低下する日本を出て、海外で働いて稼ぐというのは新時代の選択肢になります。
変化の激しい時代において、「どの国でも通用する会計・財務の軸」を持つことは、将来の選択肢を大きく広げてくれます。
ACCAは、その軸を築くための非常に実践的な国際資格です。
まとめ|ACCAはグローバル時代の実務資格
ACCAは、世界で通用し、実務に直結し、長期的に価値を発揮する国際会計資格です。
日本ではまだ取得者が多くないからこそ、キャリアにおける差別化要素として
大きな可能性を秘めています。
国際的な舞台で活躍したい、会計を武器にキャリアの幅を広げたいと考えている方にとって、
ACCAは非常に有力な選択肢と言えるでしょう。
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